平成22年6月14日 平成二十二年度の新作名刀展

日刀保の平成二十二年度の新作名刀展を見に行ってきました。

今年はさすがに出品作品は少なく、太刀と刀が23口、短刀と脇差が13口、刀身彫刻4口、彫金20口となっていましたが、それでも見所はそれなりに有りました。

刀の部門では特に杉田さんの寸延び短刀と、江沢さんの短刀はどちらも匂い口が小錵で明白な映りが現れていて、しかもそれが錵ていました。同業者の私からすると、ついに現代刀もここまで来たかと焦ってしまいました。(私は造る側から見ますので、ついつい技術的な面から見る傾向が強いですが)
それに、いつもながらですが、古川さんの見事な地鉄や松葉さんの豪壮な太刀には圧倒されました。

振り返って自分は最近これに見合うだけの研究成果を出せているのか考えさせられてしまいます。やはり作品は出品しなくとも、ちゃんと展覧会を見て刺激を受けないと自分がだれてしまい、時代に取り残されてしまいそうですね。

ただ、今回の出品者の構成を見ると作刀の部無鑑査が11人、太刀と刀の部門の出品者14人の計25人で、これはとても良いバランスとは思えませんね。これで特選2人で、どちらも元々特選常連組で作品は申し分無い内容だったと思いますが、これではせっかくの作品なのに値打ちが無くなってしまいますね。また展覧会の作品集も写真が今一で印刷精度も高くなく、写真には厳しい私には不満が残りました。

こぼれ話的なお話としましては、私の古い知り合いで、たたら研究では私の師匠ともいえる小守さんという方が今年は出品されていました。小守さんは定年退職後刀匠免許を取られて、たたらを楽しみながら悠々自適で刀を作っておられるという羨ましい人ですが、ついに今年は出品されて短刀の部で努力賞を取っておられました。他にも短刀を持って来られていたので拝見したのですが、さすがに地鉄が面白く、刃中の錵もよくついて地鉄の違いを強く感じました。やはり地鉄の研究はマニアックな刀鍛冶にはたまらない話題で、もう十年以上会っていなかった事も手伝い、勉強会の会場でついつい昔話で盛り上がってしまいました。

まあ、今年の日刀保の展覧会では、面白いお話も色々と有りましたが、全体的には、去年にまして出品している刀鍛冶も展覧会を見に来ている人も少ない様で、以前に比べるとかなり寂しくなっていました。ただで同業者の刀を見せてくれるのだから、自分が入っていない会だとしても見学くらいは来ても良さそうなものですが、どうしてこうなってしまうのでしょうかね。元々競い合っていた仲間なのに。

もうもめ事は上の方の人に任せて、職人は職人同士、日刀保や刀文協という会にこだわらず、お互いにもっと交流して切磋琢磨した方が良いと思うのですがね。もめ事の弊害を職人の世界にまで及ぼすのはもうやめて欲しいというのが今の実感です。

尚、日刀保の新作名刀展は6月27日(日)まで刀剣博物館
http://www.touken.or.jp/

7月3日(土)〜7月22日(木)まで、鶴岡市の至道博物館で
http://www7.ocn.ne.jp/~chido/
開催されています。

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